1 手根管症候群とは
1-1 手根管症候群の定義
手根管症候群とは、手首の内側にある「手根管(しゅこんかん)」というトンネル状の部分で、「正中神経(せいちゅうしんけい)」という神経が圧迫されることで起こる疾患です。この神経が圧迫されると、手のひらや指に痛みやしびれ、感覚の鈍さ、動かしにくさなどの症状が起こります。主に親指から薬指の親指側半分に症状が現れやすく、進行すると握力が低下したり、物を掴みにくくなったりすることがあります。
1-2 手根管症候群の一般的な原因
手根管症候群が起きる主な原因として、日常生活での手首や手指への負担が挙げられます。例えばパソコン作業、スマートフォン操作、楽器演奏、調理作業など、同じ動きを繰り返し行うことで手首に負担がかかり、徐々に神経が圧迫されていきます。その他にも、手首の骨折や脱臼、腱鞘炎(けんしょうえん)、妊娠や糖尿病、関節リウマチなどが原因になることもあります。女性は特に40代~60代で発症することが多い傾向があります。
1-3 手根管症候群の種類
1-3-1 特発性(原因不明型)
特発性の手根管症候群は、明確な原因がわからずに発症するケースです。特に手を酷使した覚えがなくても、突然症状が現れることがあります。中高年の女性に多く、ホルモンバランスや加齢が影響すると考えられています。
1-3-2 外傷性(ケガや骨折後型)
外傷性の手根管症候群は、手首の骨折や脱臼、打撲などによって手根管が圧迫されることで起こります。特に手首をケガした後に、腫れが引いても痛みやしびれが残る場合は、神経への圧迫が原因である可能性があります。
1-3-3 妊娠・疾患合併型(妊娠や糖尿病など)
妊娠や糖尿病、関節リウマチなど、身体の変化や疾患が原因となって発症するタイプです。妊娠中はむくみや体液量の増加によって手根管内の圧力が高まり、神経が圧迫されやすくなります。また糖尿病や関節リウマチなどでは、炎症や腫れによって神経が圧迫されることがあります。
2 手根管症候群の原因とメカニズム
2-1 手首の構造と手根管の役割
手首には手のひら側に、「手根管」と呼ばれる狭いトンネル状の空間があります。この手根管の中を、「正中神経(せいちゅうしんけい)」と手指を動かすための腱(けん)が通っています。正中神経は、主に親指から薬指の親指側半分までの指の感覚を担当し、手や指を繊細に動かす役割があります。この手根管が何らかの理由で狭くなったり、腫れたりすると、内部の神経が圧迫され、手根管症候群の症状が現れます。
2-2 神経圧迫のメカニズム
手根管症候群は、主に「正中神経」が圧迫されることで起こります。長時間の手首の反復運動や不自然な姿勢をとることで、手根管内の腱が炎症を起こしたり、むくんだりすると、空間が狭くなり神経が押しつぶされる状態になります。圧迫が長引くと、血流が悪くなり、神経が傷ついて慢性的な症状に進展します。初期段階では手を休ませることで症状が改善することもありますが、長期間放置すると回復しにくくなります。
2-3 日常生活動作による影響
手根管症候群を引き起こす原因の一つに、日常生活での手首の使い方があります。特にパソコン作業やスマートフォンの操作、手芸や楽器演奏など、手首や指を同じ姿勢で長時間使い続ける作業は、手根管内の腱に負担をかけやすく、腫れや炎症を引き起こします。また、寝る時に無意識に手首を曲げるクセのある人も症状を悪化させる可能性があります。こうした生活習慣や姿勢のクセが、徐々に手根管症候群の発症や悪化につながります。
2-4 他の疾患との関連
手根管症候群は、単独で発症することもありますが、他の病気との関連で発症する場合もあります。代表的なのが「糖尿病」や「関節リウマチ」です。糖尿病の場合は神経自体が障害を受けやすくなり、関節リウマチの場合は関節や腱に慢性的な炎症が起こるため、神経圧迫のリスクが高まります。また、「甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)」という病気や、妊娠期のホルモンバランスの変化も手根管症候群を引き起こす原因となることがあります。他の病気が関わっている場合には、そちらの治療も並行して行う必要があります。
3 手根管症候群の症状と診断
3-1 症状の種類
手根管症候群の主な症状は、「手のしびれ」「痛み」「感覚の鈍さ」「握力の低下」です。特に、親指、人差し指、中指、薬指の親指側半分の指先に、しびれやチクチクした感じが現れます。症状は夜間や明け方に強く出やすく、「手を振ったり」「指を動かす」ことで一時的に症状が軽減することがあります。症状が進行すると、小さな物を掴みにくくなったり、ボタンを留めたりペンを持ったりする動作が難しくなる場合があります。さらに重症化すると、親指の付け根にある筋肉が痩せて、指の動きが制限されることもあります。
3-2 自己診断の注意点
インターネットなどで手根管症候群について調べ、自分の症状と照らし合わせることは可能ですが、自己診断のみで結論を出すことは注意が必要です。手のしびれや痛みは、手根管症候群以外にも「頚椎(首)の問題」「肘部管症候群(肘の神経障害)」「糖尿病性神経障害」など別の疾患でも起こります。そのため、自己判断に頼らず、症状が長く続く、日常生活に支障がある場合は、必ず専門家の診察を受けましょう。
3-3 専門家による診断方法
専門家(整形外科医や整体師など)による診断は、まず問診(症状についての聞き取り)から始まります。その後、「ティネル徴候」「ファーレンテスト」といった手根管症候群特有の診断テストを行います。
ティネル徴候
手首の内側を軽く叩くと、指先に電気が走るようなしびれがあるかを確認します。
ファーレンテスト
手首を直角に曲げて30~60秒保った際、指先にしびれや痛みが現れるかを確認します。
また必要に応じて、超音波検査やMRI検査、神経伝導速度検査(神経の伝達スピードを測る検査)などを行い、神経がどの程度圧迫されているかや、他の病気との関連性も確認します。診断結果に基づき、最適な治療法を提案します。
4 手根管症候群の治療法
4-1 保存療法
手根管症候群の初期段階や軽度の場合には、手術をせずに症状を改善させる「保存療法」を行います。主な保存療法には以下の方法があります。
装具療法(手首サポーター)
手根管症候群の初期や軽症の場合、手首の負担を軽減するための「手首サポーター(スプリント)」を装着する方法があります。特に睡眠時や手を酷使する作業の際に装着すると、手根管内の神経への圧迫が軽減され、症状が和らぎます。手首を安定した角度に保つことで、炎症が落ち着き、徐々に症状が改善するケースも多く見られます。
投薬療法(抗炎症薬など)
症状が比較的軽度であれば、炎症や痛みを抑える薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)を処方し、症状の緩和を図ります。痛みが強い場合にはステロイド薬を手根管内に直接注射して、一時的に神経の圧迫を緩和させる方法もあります。ただし、投薬はあくまでも症状緩和が目的のため、根本的な改善には生活習慣の見直しも必要です。
理学療法(整体・オステオパシーなど)
手首周辺や肩・腕などの筋肉の緊張が原因となっている場合、整体やオステオパシーなどの施術によって症状の改善を目指します。特にオステオパシーは、手首だけでなく、首や肩などの全身のバランスを整えることで神経の圧迫を軽減し、症状の根本的な改善につながるケースも多いです。専門家と相談しながら適切な施術を受けることで、症状の再発防止にも役立ちます。
4-2 手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、症状が重度で日常生活に支障が出ている場合は、手術療法が検討されます。手術では手根管を圧迫している靭帯(じんたい)を切開し、神経への圧迫を取り除きます。比較的短時間(15〜30分程度)の手術で済むことが多く、日帰り手術も可能です。
手術後は早期に症状の改善を実感できることが多いですが、術後のリハビリや日常生活の指導を守ることが重要です。また、手術には傷跡が残る、感染症や合併症のリスクが伴うため、医師との十分な相談が必要です。
4-3 在宅でできる対処法
症状が軽度の場合や治療後の再発予防のためには、自宅でも簡単にできるケアが効果的です。具体的には、手首や指のストレッチ、温熱療法(温めること)や冷却(炎症が強い場合)を使い分けることが重要です。
・ストレッチ:手首や指をゆっくりと伸ばして、緊張した筋肉をほぐすことで神経の圧迫を緩和します。
・温熱療法:手首の痛みが慢性的な場合は、お湯で温めたり、温熱パッドを使うことで血行を促進し、症状を緩和します。
・冷却療法:炎症が強く急激に痛みが増した場合は、一時的に冷やして炎症を抑えることも有効です。
また、長時間のスマホ操作やパソコン作業を控えたり、こまめに休憩を取ったりすることで手根管への負担を減らすことができます。日々の生活習慣の見直しが治療効果を高めるポイントになります。
5 手根管症候群予防と生活習慣の改善
5-1 日常生活の姿勢改善
手根管症候群の予防に効果的なのは、日常生活での姿勢改善です。パソコン作業やスマホ操作をする際、手首が極端に曲がった状態を避けることが重要です。キーボードやマウスの位置を調整し、手首を自然な角度(まっすぐ)に保ちましょう。また、肘や肩の緊張を軽減することで、手首への負担を軽減することができます。定期的に休憩を入れて、手首を動かしたり軽く伸ばしたりすると、予防効果がさらに高まります。
5-2 ストレッチ・エクササイズ
手根管症候群の予防や改善には、毎日のストレッチや簡単なエクササイズが有効です。手首をゆっくりと前後左右に伸ばすストレッチ、指を一本ずつ伸ばしたり握ったりする運動が特に効果的です。さらに、肩甲骨や腕、肩周辺のストレッチを組み合わせることで、全体の血流が改善し、手首への負担が軽減されます。1日数回、仕事の合間や就寝前に取り入れることで、症状の予防につながります。
5-3 仕事環境の調整
手根管症候群を予防するためには、職場や在宅での仕事環境を見直すことが大切です。机や椅子の高さを調整し、腕が無理なく自然な角度で作業できるように工夫しましょう。また、人間工学に基づいた「エルゴノミクス」キーボードやマウス、パームレスト(手首置き)を使用すると、手首の負担をさらに減らすことができます。作業環境の改善は予防だけでなく、生産性や集中力の向上にもつながります。
5-4 食生活・栄養面の改善
手根管症候群の予防には食生活や栄養バランスの改善も重要です。特にビタミンB群(B1、B6、B12)を豊富に含む食品(玄米、豚肉、卵、バナナなど)は、神経の働きを助け、症状の緩和や予防に役立ちます。また、抗炎症作用があるオメガ3脂肪酸(青魚やアマニ油、エゴマ油など)を日常的に摂取することで、炎症の軽減にも役立ちます。塩分を控え、むくみを防ぐために水分を適度に摂取し、バランスの良い食事を心がけることで、手根管症候群の予防に繋がります。
6 よくある質問
6-1 Q: 手根管症候群は放置していても自然に治りますか?
6-1 A: 軽度の場合は、安静にすると自然に症状が和らぐこともあります。ただし、多くの場合、放置すると悪化する傾向があります。慢性化すると治療が難しくなるため、早期に専門家に相談することをおすすめします。
6-2 Q: 手根管症候群の手術は痛みが強いですか?
6-2 A: 局所麻酔を使用して行われるため、手術中に痛みを感じることはほぼありません。手術後数日は軽い痛みや違和感を感じることがありますが、痛み止めで十分にコントロール可能な程度です。
6-3 Q: 手根管症候群の手術後、どのくらいで仕事に復帰できますか?
6-3 A: 一般的には軽作業の場合、約1~2週間で復帰が可能です。重いものを持ったり手を酷使する仕事の場合は、約1か月ほど回復期間が必要になる場合があります。
6-4 Q: 手根管症候群はどの年代に多いですか?
6-4 A: 一般的に40~60代の女性に多く発症します。これはホルモンバランスの変化や家事・仕事での手の使い過ぎが原因と考えられています。ただし、若い方や男性にも起こることがあります。
6-5 Q: 妊娠中に手根管症候群になりました。産後は治りますか?
6-5 A: 妊娠中の手根管症候群は産後に自然と改善することが多いです。これは妊娠に伴うむくみやホルモン変化が原因で、一時的に神経が圧迫されるためです。ただ、症状が続く場合は専門家に相談しましょう。
6-6 Q: パソコン作業が多いですが、どのように予防したら良いですか?
6-6 A: 作業中にこまめに休憩をとり、手首をストレッチする習慣をつけることが効果的です。手首サポーターやエルゴノミクス設計のキーボードを使用し、手首に負担がかからない姿勢を保つことも重要です。
6-7 Q: 手根管症候群は再発することがありますか?
6-7 A: はい、治療後も手首を酷使する生活が続くと再発する可能性があります。再発を防ぐには、日常生活での姿勢や手の使い方を改善し、予防のためのエクササイズを継続的に行うことが大切です。
6-8 Q: 手根管症候群は整体やオステオパシーでも治せますか?
6-8 A: 整体やオステオパシーは、症状の改善や予防に有効です。特に軽度~中度の場合、神経圧迫を軽減する施術により効果が期待できます。ただし、重度の場合は手術が必要な場合もあるため、専門家への相談が重要です。
7 まとめと次のステップ
7-1 手根管症候群管理の総括法の研究
手根管症候群は、早期に対処すれば治療効果が高い疾患です。保存療法や生活習慣の改善、手術療法など多くの選択肢がありますが、大切なのは自身の症状や原因に合わせて適切な治療法を選ぶことです。また、日常の手首への負担を軽減し、予防的なエクササイズやストレッチを継続的に行うことが、症状改善・再発予防に重要なポイントとなります。
7-2 いつ専門家の診察を受けるべきか
以下のような症状が見られた場合は、すぐに専門家の診察を受けましょう。
・手のしびれや痛みが長く続く場合
・日常生活(字を書く、ボタンを留める等)が困難になってきた場合
・夜間に痛みやしびれが強く睡眠に支障をきたす場合
早めの診断と治療が症状の悪化を防ぎ、回復を早めます。
7-3 まとめ
手根管症候群は、手の酷使や生活習慣の影響で誰にでも起こり得る疾患です。自己判断は難しいため、気になる症状があれば早めに専門家に相談し、適切な治療と予防策を取り入れましょう。日々のちょっとした習慣改善が、手首の健康を守る大きな一歩になります。
整体なおは用賀駅徒歩1分の整体院です。
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この整体コラムを書いた人
整体院整体なお院長・鍼灸あん摩マッサージ指圧師・整体師直井 昌之

経歴
早稲田大学スポーツ科学部卒業
日本鍼灸理療専門学校昼本科卒業
卒業後、修行のため神奈川県市の鍼灸接骨院で働き、ケガの処置やマッサージについて学ぶ
根本的な体の改善を目指すために、トレーニング、理学療法や整体、カイロプラクティック、機能神経学、オステオパシーを学び始める。
自律神経失調症のセミナー フィリップ・ブルディーノD.O
内臓マニピュレーション リタ・ベナモアD.O
内蔵オステオパシー泌尿生殖器セミナー ジェローム・バティストD.O,M.D
オステオパシーの診療における診断と治療 カール・スティールD.O
マッスルエナジーテクニック国際セミナー 頸椎、胸椎、肋骨、腰椎 カイ・ミッチェルD.O
など計700時間以上の研修会に参加
資格
- 鍼灸あん摩マッサージ指圧師
- 中学高校体育教員免許
所属団体
- 日本オステオパシーメディスン協会・スティルアカデミージャパン4期生
メッセージ
オステオパシーを中心とした手技による施術をメインで行っております。
少しでも快適な生活を送れるようにサポートしていければと思います。
「院長あいさつ」にさらに詳しいプロフィールを載せていますのでぜひご覧ください。
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