胸郭出口症候群とは
1-1 胸郭出口症候群の定義
胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome: TOS)は、首から肩にかけての神経や血管が圧迫されることで発生する症候群です。特に、腕や手にしびれや痛みが生じることが特徴です。
1-2 胸郭出口症候群の一般的な原因
胸郭出口症候群の主な原因は、以下のような要因による神経や血管の圧迫です。
姿勢の悪化(猫背や巻き肩)
筋肉の緊張(斜角筋や小胸筋の過緊張)
頸肋(けいろく)(生まれつきの余分な骨)
反復運動や過度な負担(デスクワークやスポーツ)
1-3 胸郭出口症候群の種類
1-3-1 神経性胸郭出口症候群(Neurogenic TOS)
首から腕にかけての神経(腕神経叢)が圧迫されることで生じるタイプで、胸郭出口症候群の約90%を占めます。主に腕のしびれや筋力低下が見られます。
1-3-2 静脈性胸郭出口症候群(Venous TOS)
鎖骨下静脈が圧迫されることで、腕の腫れや血流障害が発生します。
1-3-3 動脈性胸郭出口症候群(Arterial TOS)
鎖骨下動脈が圧迫されることで血流が悪くなり、手の冷感や青紫色の変色が起こります。
2 胸郭出口症候群の原因とメカニズム
2 胸郭出口症候群の原因とメカニズム
2-1 神経や血管の圧迫
首や肩の構造の問題により、腕神経叢や鎖骨下動脈・静脈が圧迫され、症状が引き起こされます。
2-2 姿勢の影響
長時間のデスクワークやスマホの使用による猫背や巻き肩が、神経・血管の圧迫を引き起こす要因となります。
2-3 筋肉の硬直
斜角筋や小胸筋の過緊張により、神経や血管が圧迫されることがあります。
2-4 生まれつきの骨格的要因
頸肋(通常よりも長い第一肋骨)や鎖骨の位置異常が圧迫の原因となることがあります。
3 胸郭出口症候群の症状と診断
3-1 症状の種類
胸郭出口症候群で現れる症状は、人によって様々ですが、大きく以下のようなパターンがあります。
しびれ・痛み
首から肩、腕、手指にかけて、ビリビリ・ジンジンしたしびれや鋭い痛みが出ます。夜間や朝方に強くなるケースもよく見られます。
腕や手のだるさ・脱力感
物をつかむ力が弱くなったり、長時間腕を上げていられなくなるなど、筋力低下や持続的なだるさを訴える場合があります。
冷え・血行不良
血管が圧迫されると、腕や手の色が変化したり、冷えやむくみ、場合によっては軽い紫斑(しはん:皮膚に現れる紫色の斑点)が生じることがあります。
肩こり・首こり
神経や血管の圧迫をかばうような姿勢をとることで、さらに筋肉が緊張し、肩こりや首こりを助長します。
3-2 自己診断の注意点
自己判断だけで対処しない
首や肩の痛み、しびれがあれば、安易に「ただの肩こりだろう」と自己判断しがちです。しかし、胸郭出口症候群は放置すると症状が悪化することがあります。
似た症状の疾患に注意
頸椎椎間板ヘルニアや四十肩・五十肩、筋肉の単なる疲労など、似たような症状を引き起こす病気は多岐にわたります。早期に専門家の診断を受けることで、正確な原因を把握することが重要です。
3-3 専門家による診断方法
専門医(整形外科医や整骨院・整体院などの施術者)は、以下のような検査を組み合わせて胸郭出口症候群を診断します。
徒手検査(マニュアルテスト)
アドソンテスト:頭を後方に反らせ、首を回しながら深呼吸をさせ、脈の変化や症状の再現を確認します。
エデンテスト:胸を張り、肩を下げる姿勢をとったときの脈の変化や症状を確認します。
画像検査
X線(レントゲン)検査:頸肋骨の有無など骨格的異常を確認します。
MRI検査:神経の圧迫具合や椎間板の状態を詳細にチェックできます。
血流検査
血管の状態を調べるため、血圧測定や血管エコー検査が行われることもあります。
4 胸郭出口症候群の治療法
4-1 保存療法
保存療法とは、手術をせずに行う治療法の総称で、主に以下の方法があります。
理学療法(リハビリテーション)
ストレッチ:首、肩、胸の筋肉を丁寧に伸ばし、圧迫の原因となる筋緊張を和らげます。
筋力強化:弱くなっている背中の筋肉や肩甲骨まわりの筋肉を鍛え、正しい姿勢をキープしやすくします。
物理療法
温熱療法:ホットパックや温浴で筋肉を温め、血行を促進して痛みを和らげます。
超音波治療:筋肉や軟部組織に振動を与え、コリや痛みを緩和させます。
姿勢矯正・動作指導
正しいデスクワーク環境の整備:座る位置やモニターの高さ、キーボードやマウスの位置などを調整します。
ストレッチ・運動指導:日常的に行える肩甲骨や胸のストレッチ、軽いエクササイズを取り入れます。
装具療法
肩を正しい位置に補正するサポーターや、猫背矯正用のベルトを活用する場合があります。
4-2 手術療法
保存療法で改善が見られない重度のケースや、血管の圧迫がひどく血行障害が顕著に現れるケースでは、手術が検討されます。具体的には以下のような方法があります。
頸肋骨や第一肋骨の切除
余分な肋骨や骨の一部を取り除き、神経・血管の通り道を確保します。
圧迫要因である筋肉の切離・再接合
斜角筋が原因の場合に行われることがあります。
手術はリスクが伴うため、医師と十分に相談して決定することが大切です。
4-3 在宅でできる対処法
病院や治療院での治療と並行して、在宅でも以下のポイントを意識すると改善が期待できます。
1日数回のストレッチ習慣
首のストレッチ:首を前後左右にゆっくり倒し、呼吸に合わせて伸ばします。
肩甲骨のストレッチ:肩を大きく回したり、両腕を頭上に上げて背伸びをするなど、肩甲骨周辺を動かします。
温熱ケア
入浴や蒸しタオルを使って首・肩を温め、筋肉の緊張を和らげましょう。
姿勢の再確認
パソコン作業では、モニターの高さを目線と同じかやや下に設定する。
スマートフォンは極力顔の高さに近づけ、首を深く前傾させないようにしましょう。
こまめな休憩と軽い運動
デスクワーク中は1時間に1回は休憩し、肩甲骨を動かす体操や簡単なストレッチを行うと効果的です。
5 胸郭出口症候群予防と生活習慣の改善
5-1 正しい姿勢の維持
椅子に深く座り、背中をまっすぐ保つ。
顎を軽く引き、頭を背骨の真上に乗せるイメージ。
5-2 適度な運動とストレッチ
ウォーキングや軽いジョギングなどで全身の血行を促進。
ヨガやピラティスは体幹の強化と姿勢の改善に効果的。
5-3 ストレス管理
ストレスがかかると、筋肉の緊張が高まりやすくなります。
リラクゼーションや深呼吸、定期的な休憩を取り入れましょう。
5-4 生活リズムの整備
十分な睡眠:寝不足は回復力を低下させ、筋肉の疲労をため込みます。
バランスの良い食事:たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどをバランスよく摂取することで、筋肉や神経の働きをサポートします。
6 よくある質問
ここでは、患者さまや一般の方から寄せられる質問をまとめました。
6-1 Q: 胸郭出口症候群と肩こりはどう違うのでしょうか?
6-1 A:
肩こりは筋肉のコリによる血行不良が中心ですが、胸郭出口症候群は神経や血管そのものが圧迫されて発生する症状です。痛みやしびれの度合い、血行障害が起こる可能性などが異なります。
6-2 Q: デスクワークが多いのですが、予防する方法はありますか?
6-2 A:
デスクワーク中は、こまめに休憩を挟み、ストレッチや軽い運動を行いましょう。椅子や机の高さ、モニターの位置も適切に調整すると効果的です。
6-3 Q: 胸郭出口症候群は自然に治りますか?
6-3 A:
軽度であれば、姿勢の改善や適度なストレッチ、生活習慣の見直しで症状が改善していくこともあります。ただし、長期間放置すると悪化する場合があるので、早期の対策が大切です。
6-4 Q: 首や肩が痛いだけなのですが、検査を受けるべきでしょうか?
6-4 A:
単なる肩こりや筋肉痛と区別がつきにくいことが多いですが、痛みやしびれが長引く場合は早めに専門家(整形外科、整骨院など)に相談することをおすすめします。
6-5 Q: どのような運動が胸郭出口症候群に良いのですか?
6-5 A:
肩甲骨まわりや首の可動域を広げるストレッチ、軽い筋力トレーニングが効果的です。ヨガやピラティスなど、姿勢全体を整える運動もおすすめします。
6-6 Q: 保存療法と手術療法、どちらを選ぶ基準は何ですか?
6-6 A:
一般的にはまず保存療法を試して効果を判断します。それでも改善がみられない、または血管圧迫がひどく重度の血行障害が起きている場合などには手術療法が検討されます。
6-7 Q: 手術後はすぐに症状が改善しますか?
6-7 A:
手術で圧迫要因を取り除いても、周辺の筋肉や神経が回復するには時間がかかる場合があります。リハビリと適切なケアを続けることで、よりスムーズに回復していくことが期待できます。
6-8 Q: 整体やマッサージで胸郭出口症候群は治りますか?
6-8 A:
筋肉の緊張をほぐし、姿勢を改善することで症状の緩和が期待できます。ただし、原因が骨格の先天的異常や重度の血管圧迫である場合は、専門医との連携が欠かせません。整体やマッサージはあくまで補助的な方法となります。
7 胸郭出口症候群に関する最新研究と進歩
7-1 運動療法の効果の科学的検証
近年、理学療法や運動プログラムの効果を定量的に評価する研究が増えています。運動療法の種類や頻度、強度によって症状の改善度が大きく異なるため、オーダーメイドのリハビリ計画が重要とされています。
7-2 術式の進歩と低侵襲化
医療技術の進歩により、内視鏡を使った低侵襲手術が一部で導入されています。傷が小さく、患者の負担が軽減されるため、術後の回復が早まる可能性があります。
7-3 ウェアラブル機器による姿勢管理
スマートウォッチやセンサーを使って姿勢や首の角度をモニタリングし、正しい姿勢を保つように通知を送る研究や製品も登場しています。日常生活での姿勢改善をサポートする技術が今後さらに発展する見込みです。
8 まとめと次のステップ
8-1 胸郭出口症候群管理の総括
胸郭出口症候群は神経や血管が圧迫されることで起こる複合的な症状であり、早期の発見・対処が重要です。
不良姿勢や筋肉の緊張、骨格異常など複数の要因が絡むため、総合的なアプローチ(姿勢改善、ストレッチ、筋力強化など)が求められます。
8-2 いつ専門家の診察を受けるべきか
痛みやしびれが1週間以上続く場合
腕や手に明らかな冷え・むくみ・色の変化がある場合
日常生活で腕や手を使う動作が困難になりつつある場合
これらの症状が出ているときは、できるだけ早く整形外科や整骨院・整体院などを受診し、適切な診断と治療を受けましょう。
8-3 まとめ
胸郭出口症候群の対策としては、姿勢の見直しや適切な運動・ストレッチが第一歩です。重症化すると手術が必要となるケースもありますが、早めのアプローチで改善が期待できます。症状が疑われる場合は専門家に相談し、適切な治療プランを立てましょう。
整体なおは用賀駅徒歩1分の整体院です。
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この整体コラムを書いた人
整体院整体なお院長・鍼灸あん摩マッサージ指圧師・整体師直井 昌之

経歴
早稲田大学スポーツ科学部卒業
日本鍼灸理療専門学校昼本科卒業
卒業後、修行のため神奈川県市の鍼灸接骨院で働き、ケガの処置やマッサージについて学ぶ
根本的な体の改善を目指すために、トレーニング、理学療法や整体、カイロプラクティック、機能神経学、オステオパシーを学び始める。
自律神経失調症のセミナー フィリップ・ブルディーノD.O
内臓マニピュレーション リタ・ベナモアD.O
内蔵オステオパシー泌尿生殖器セミナー ジェローム・バティストD.O,M.D
オステオパシーの診療における診断と治療 カール・スティールD.O
マッスルエナジーテクニック国際セミナー 頸椎、胸椎、肋骨、腰椎 カイ・ミッチェルD.O
など計700時間以上の研修会に参加
資格
- 鍼灸あん摩マッサージ指圧師
- 中学高校体育教員免許
所属団体
- 日本オステオパシーメディスン協会・スティルアカデミージャパン4期生
メッセージ
オステオパシーを中心とした手技による施術をメインで行っております。
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